kiss. 7

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◇  クリスマスの朝の街は心なしか浮ついている。どこからともなくクリスマスソングが耳に流れ込んできて、否応なしに今日がめでたい日だと強要されているような気にもなる。  市ノ瀬駅に足を進めながら自分の早まった行動を少し後悔していた。好意を受け入れられてもないのに、結婚を言い出してしまった自分に誠意と実行が過ぎるだろと思わずツッコミを入れたくなる。冗談ならまだしも、思ったら口からスルッと飛び出して行った言葉に対して、逆に不誠実に見えなかったかと思案するほど大真面目な自分にもびっくりする。  恋に時間など関係ない、と前の自分が聞いたら「クソか」とバカにしていたと思う。  でも、今は違う。  しかも、恋じゃなくて、愛。  大真面目に言い切れる。  彼女を幸せにしたい。  笑わせたい。  他の男の事で苦い顔をして、悲しむ姿を見たくない。  駅前のジュエリーショップの扉が開いて、店員が看板を出しているのが目に入った。  うっかりプロポーズしたなんて思われたくない。  一時の感情で、自分1人で盛り上がってなんて、とも思われたくない。  彼女の気持ちを大事にしながら、でも、精一杯を伝えたい。  看板に指輪の文字が目に入って、おとはの薬指のサイズが分からずに店の前を通り過ぎた。  電車に乗って五反田駅から自宅に向かっていると駅に向かう人が多く、しかもカップルばかりが目についた。以前なら興味もなかった周りの状況を誰よりも気にしている自分がいて、笑ってしまいそうになる。で、その状態を嫌とも思っていない。  帰って、正式なプロポーズについて調べるか。  またらしくもない事を思って、クリスマスの日を過ごした。
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