Kiss. 8

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 心が熱烈に渇く。  満たして、充たされて、潤したい。潤して欲しい。  彼女の心なんていらないって言ったのに、何よりもそれが欲しい。  見栄を張った自分の強がりの言葉と、心が矛盾して、歯車が軋む音がする。  抱く前より、後に更に夢中になるって、男の本能に反してる。  反してるのに、自覚があるのに、おとはにまたすぐ会いたい。抱いて、その瞬間だけじゃなくて、全部が俺のものだと言いたい。  でも、1番は俺じゃない。  そんな女を選んだのは俺だけど、胸は苦しい。  この苦しさは選んでないんだけどな。  仕事納めの次の日もおとはと自分の家で過ごした。  食欲も睡眠欲も性欲も彼女で満たされた俺は他人が目も当てられない程、おとはに愛を囁いた。  愛してるの言葉じゃ足りない程、指先も、腕も、口も、油断したら全身で愛情を伝えようとするから、自分でも手に負えない。  愛情の矢印を可視化できるとしたら、俺からおとはに向かっている矢印はめちゃくちゃデカい。  で、おとはから向かってる矢印が1番デカい相手はコケ野郎。  俺にも向いてるんだろうか、チャイロとシロよりちょっとデカいぐらいかな。そんな事、思ってたら凹むな。  いっその事、子供でも作りたいぐらいだ。  責任は喜んでとる。  願ったり叶ったりだ。  でも、既成事実を作ったとしても、彼女の心は手に入らない。それに俺の欲望だけで子供を作るのも違う気がする。  だから、ちゃんと、相思相愛になりたい。  関係を大切に、時間を掛けてでもいいから、信頼されるように築きたい。  一緒に生きていく関係を。
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