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新年会
ひと月早い。
くるのが、早すぎる。
息が、呼吸が止まるほど、ココロが固まっている。
新年会の終わったあの日の夜、酔った私を部屋まで送ると支えたJは、足元のおぼつかない私を抱えたまま、真っ暗な何処かの扉を開けて、私を中へと押し込んだ。
重い扉の閉まる音、冷たいコンクリートの床、倒れ込んだまま目を開けても何も見えない。
「どこ? ここ」
なんとか腕の力だけで上半身を起こしかけた私を、再び床へ押し倒すと、軽々と服を脱がしていかれた。
何度もやだと叫んだ、と思う。
好きな人がいるのと、叫んだと思う。
押しのけようとする腕は簡単に捻られてコンクリートに押しつけられた。
フラッシュが光る。
何度も光る。
口に押し込まれた何かを噛む力すら、残っていなかった。
フラッシュが光る。
体の奥を抉りながら光る。
やだ、と、何度も叫んだ。と思う。
フラッシュの光だけが脳に刻み込まれた。
レイプされたと言った私に、あの人が真っ先に言ったのは、
「何してんだよお前」
という、私を責める言葉だった。
その瞬間に、私の全ては停止した。
気がつくと自宅の布団の中だった。
元配偶者が言う。
「死んだような顔して帰ってきたよ」
ああ、私は死んだのか。
納得したら、フラッシュが光った。
次に目が覚めたのは、助手席の上でだった。
警察に行くかと問うあの人は、咄嗟に出たあの科白を忘れたのだろうか。
私は写真を取り返したいと訴えたけど、呆れたように再び
「何してんだよお前」
と言う声が聞こえた。
あの声に、きっと殺された。
瀕死の私にとどめを刺した。
私を殺したのは、あの人だった。
フラッシュだけが、今も記憶の裏側に刻まれている。
あの人の、あの科白と共に。
今もまだ、刻まれた脳だけが反応する。
私の身体を動かさない。
私の感情を動かさない。
止まった私を上から見てる私は、動かない私を動かせない。
フラッシュが。何度も光る。
今もまだ。
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