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女帝の病床
長弟が、甲斐甲斐しく女帝の様子を見に行っている。
王配殿下なるチチオヤな男は、かつての華やかで美しい女帝の夢を見ているのみ。
いよいよアッシャー家が崩壊することからすら目を逸らし夢を見続ける。
男は女帝と婚姻する以前、結婚を考えた女性がいた。女々しくもその女性との思い出のアルバムを、女帝の王宮に隠し持っている。
一度だけ、その女性とのアルバムを見せられたことがあった。可もなく不可もない、一瞬で顔を忘れるような、何の変哲もないひとだった。
このひとの後に女帝と出会ったら、それはもう夢中になるであろうと、容易に推測できた。
今、女帝は入院しているが、既に起き上がることも食事を摂ることもできない。
その女帝を見舞うこともしない男は、結局のところ『頭が良くて美人なオンナ』であった頃の女帝を愛していただけだった。
かつて頭脳明晰才色兼備だった女帝は、近いうち、最愛の長弟に看取られるのだろう。
いつだったか、妹に言われたことがある。
「お姉ちゃんは、女帝が死んでも泣かなさそう」
と。
彼女は、こんなツラい目に合わされててもきっと泣くと思うと言っていた。
「母親」という存在の大きさを思い知った瞬間だった。
何度も何度も、不屈の精神で復権した女帝。
私は彼女の訃報を待つばかり。
四人もいる子たちの思惑は皆異なる。
それがまた、私には不思議で仕方ない。
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