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アッシャー家で
オトコ連中には全く家事をさせなかった女帝。
その弊害は、勿論娘たちが処理するのだが。
今日、そのオトコ連中に夕飯を届けにアッシャー家へと行った。
電話では話したくなかったのだろう、女帝に心酔している男が、やっと女帝の現状を話した。
曰く、女帝の入院する病院は、見舞いは週2回、二名までと決まっているが、女帝に限り二名までならいつでも見舞って良いと言われている、と。
声も小さくなっちゃってね
と男は言うが、そりゃそうだ。
声帯は筋肉だ。使わなければ衰え、声も小さくなる。
あの女は、もう十分すぎるほどに声を張り上げ、人々を糾弾してきた。
病床で起き上がることも食べることもできなくなった今くらい、囁く程度の声で話せばいい。
それをそのまま男に伝える私を、残酷だと、冷酷だと、誰が責められるというんだ。
私たちは、その張り上げられる怒声に曝され続け、凍える夜空の中、凶漢に見つからぬよう植栽に身をひそめ、腕を傷だらけにし、ODを繰り返しては胃洗浄の苦痛に耐え、そうして死と隣合わせで生き延びてきたのだから。
猫なで声しかしらない弟たちは、女帝がどれほど差別主義者だったのか、自覚など一生できない。
勿論それは男も同じだ。
法廷でその芍薬の如き立ち姿で被告を糾弾し、有罪へと追いやっていたその姿に惚れたのだから。
まあ、とにかく、男のその話を聞いて、私はやっとか。と安堵した。
いよいよ解放されるのだ。
あの呪われたアッシャー家から。
待ち望んだ刻限は、すぐ其処まできている。
呪いから解放されるときが、間もなくやってくる。
ひたすら疲れた。
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