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名のない関係
しんどいって言うだけで、車何時間も走らせて迎えにきてくれた。
ダラダラしたいねって言い合うだけで、迎えに来てくれた。
遊びたいって言うだけで、終電もなくなった時間に迎えに来てくれた。
関係に名前がつけられないねって笑い合う。
ひとりじゃ眠れない君は、私がベッドに寄りかかってケータイいじってるだけでぐっすり眠れた。
未来の約束もない、名もない関係。
ただツラいときいつも迎えに来てくれる、その関係が、ずっと続くと、何もないのに信じてた。
約束もないのに、一緒にいる時間は一瞬なのに、それでもその「名前のない関係」が、「約束のない時間」が、永遠だと漠然と信じてた。
お母様は元気?
連絡もせず実家に行ってしまうような無礼者に、何も言わず歓迎してくれた。
本当は、羨ましかった。
君が、ぶら下がったお父様を最初に見つけてしまったトラウマを抱えて生きているが故に、生きてるだけでいいと、全てをありのまま受け入れてくれる優しい存在であろうと、してたとしても。
怒って、呆れて、軽蔑して、離れていいよ。
君が私を在るが儘に受け入れたように、私も君を在るが儘に受け入れるから。
名前も約束もなくただ一緒に時間を過ごしていける関係は、他人からは理解されずにめちゃくちゃに粉々にされて、なかったことになった。
どれだけの人に誹られても、君にすら軽蔑されようとも、あのときのあの空気が、私を生かしてくれたこと、私は覚えてる。
君が忘れても、私だけになっても、ずっと信じてる。
瞬間しか生きられない私たちだったから。
それを紡いで繋いで生かしてくれて、ありがとう。
今も私は生きてるよ。
瞬間をツギハギにしながら、なんとか歩き続けられてるよ。
呼吸の仕方を教えてくれてありがとう。
君も呼吸をしてたらいいな。
今も。
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