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キノコゾンビ
十数メートル先に立つ、物言わぬ人型は俺の存在に気がついた様子だった。
頭頂部は極彩色の傘へと変化し、目もなければ鼻も口もない、凹凸のない白色の平らな面をこちらに向けている。
この化け物は、どうやって俺を捉えているのだろう。
そんな事が頭をよぎった。
ワイシャツの裾から伸びる、大小様々カラフルなキノコ達が密集している腕をこちらに向け、俺の方へと近寄ってくる。
よたよたとした足取りで緩やかに詰めてきたそれに、元は人間であるはずのそれに、俺は躊躇なく右手に握っていた金属バットを傘めがけて叩きつけた。
なんとも言えない感触が金属バット越しに手に伝わる。
胞子が舞う中、俺の一撃は頭部を大きく損傷させた。
がくりと膝を折り、大きく体勢が崩れたそれを好機とみた俺は、振り下ろしていたバットを構え直し、今度は胴体へとバットをフルスイング一閃。
直撃し吹き飛んでいったそれは空中で上半身と下半身に、千切れバラバラに地面へと着地した。
上下半身の間にぶちまけられた、肉体だったであろうそれらの断面は白く繊維質で、出血はない。
バットを中段に構えながら上半身へとじりじりと詰め寄る。
それはもう動くことはなかった。
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