Act.2《これが、初恋なんだね。》

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「良いですか?横山町のスタバの近くです。日章ビルって所です」 淡々と秀治は言う。 「待ってますから」 電話を切ると秀治は実子を見る。 少し怯える目の実子を秀治はジッと見つめた。 さっきの男に銃口を当てた自分が、冷静じゃなかった事に自分を許せなかった。 実子が襲われ怯える姿を見て頭に血が上り、気がつけば人目も気にせず男の後頭部に拳銃(リボルバー)を当ててしまっていた。 万が一実子が傷つけられていたら、引き金すら引いてしまっていたかもしれないと思った。 「俺がヤクザだって事、お袋達には秘密にして欲しい。何も知らないんだよ、あの人達。迷惑をかけたくないんでね」 秀治は静かな口調で話しながら実子に微笑む。実子はドキドキしながら秀治を見つめる。 「た、助けて、くれて、ありがとう」 実子はそれだけ言うとメソメソと泣き始めた。 びっくりしてやっと落ち着いたら、今度は涙が溢れて止まらなくなった。 秀治は実子に近づく。 つい、抱きしめたくなる。 秀治は気持ちを押さえて手を伸ばし、実子の頭をポンポンとした。 「…………浩二さんが迎えに来るから。俺が言っても信じねぇかも知れないけど、浩二さん、本当に良い人だぜ。見合い断ったらしいけど、もう一度考え直してみてよ」 今のふたりの関係を、何も知らない風を装って秀治は言う。 そう言いながら、本当はなぜこんな事を言うのかと後悔した。 心がズキズキとする。 「…………大丈夫です。私たち、今、仲良くさせてもらってます。この先どうなるか分からないけど」 実子はそう言うと言葉を止めた。 その言葉を聞いて、秀治は微笑んだ。 もう、仕方ないと悟った。 自分の気持ちに、気付くのが遅かったと。 「安心してください。ご両親にも美奈子ちゃんにも、秀治さんの仕事のこと話しませんから」 にっこり笑って実子は言う。 秀治も穏やかな顔で実子を見つめて笑った。 これ以上、言う言葉が何も見つからなかった。
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