初日の出

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初日の出

 どうしてこんなにも、遅くなってしまったんだろう?  自棄糞になりながら、徐々に明るくなってきた辺りの景色を見回し、逸る気持ちを抑え、階段を上がった。自宅の周りには、鬱蒼とした雑木林が広がっていた。階段を上がると海へと出る。そして一気に視界が開け、朝陽を拝めるようになっていた。  初日の出は昇ってしまった後だろうか? 正月が来るまで心から楽しみにしていた。無尽蔵な感情のように浮き立つ興奮のようだ。  昨夜は年越しのライブを見たのがいけなかったのだろうか? こんな遅くまで、寝入ってしまった。何故、こんなつまらないミスばかり犯してしまうんだろう、と唇を噛んだ。  所詮僕にはどこにも行くことなどできないのかもしれない。昨年の憂鬱を思い出し、ぐっと拳を握った。口の中にはまだ、苦い味が残っていた。一段一段上がる度に、その苦さが増していった。  憂鬱が降り積もり、その瞬間に、丘の上へと辿り着いた。  すると――。  憂鬱は唯一の幸せへと昇華した。  爽やかな風が吹き抜けていき、僕の前髪が浮き上がった。そこから一斉に海が見渡せ、朝陽が赤くぎらぎらと輝いていた。  突然、この世に生まれ出た命のように、魂の息吹に溢れた景色だ。心の中が膨らみ、その瞬間に弾け飛び、果てしない透明感が心を澄み渡らせた。  頬が緩み、僕の頭上を一羽の鳥が飛び去った。それは僕の枷を叩き壊し、海原の彼方へと消えていった。  また新しい一年が始まる。僕の足先がスタートラインを踏み越えた。  了
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