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初詣
行列の最後尾に並んで、白い吐息を漏らした。その日はとても寒く、陽射しはどこか暖かかった。それでも人々の囁き声があちこちで聞こえてくる。たくさんの星の川が連なっているように、そこには日常の輝きがあった。
神社の周りには行列が続いていた。毎年のお馴染みの景色だ。たこ焼きの袋を提げた女性が現れ、連れの男性と仲良く食べ始めた。とても、美味しそうだ。
男の子が笑い声を上げ、走り回っている。
この風景を見られることが本当に嬉しかった。去年はとても忙しい一年だった。徹夜続きで体力的に堪え、でも、それを乗り切った今はどこか、達成感があった。
ふと思い出した。昨年読者に会った時、どこかはにかむような笑顔で話しかけられたのを覚えている。
「ああいうほのぼのとした小説は、余裕のある心境でしか、書けないのではないですか?」
その時は曖昧に答えたが、実際はかなり、切羽詰まっていた。原稿を書いている時は地を這うようにタイプし続けていた。半分、眠りこけていた。それでも、と筆を振るい続けた。
そんな一年を振り返ると、この瞬間が本当に嬉しく感じられた。
行列はなかなか進まなかった。でも、その遅いペースが私には嬉しかった。束の間の穏やかな一時をいつまでも味わっていたい。本当に心の底からそう思った。
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