更須守虎はかく闘いき

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「オフルマズドの息たる火に焼かれ、無象である始原の状態へ還れ! 還元(フラショークルティ)!」  そして、遥か天空より燃え上がる右脚を前に突き出し、まるで飛来する隕石の如き真っ赤な炎の塊となってザッハークへ強烈なキックを食らわした。 「ウギャアァァァーッ!」  瞬間、断末魔の叫びとともにザッハークは大爆発を起こし、着地した守虎は解けて元に戻ったマフラーを回収する。 「くっ……今回はここまでか。憶えておけよ、アフラ・マフラー!」  それを見て、形勢不利と判断したアエーシュマも捨て台詞を口に早々その場から姿を消した。 「フゥ……これでもうあの酒に悪酔いするやつもいねえだろう」  一方、すべての敵を退けた守虎も、一息吐いて変身を解くと、いつものラクダシャツと腹巻姿へと戻る。 「さてと、この街での用もすんだし、ヤクザな兄貴はお暇させてもらうとするか……」  だが、彼は生家へ向かうことなく、それとは真逆の方向へと肩で風を切りながら歩き始める……そのまま妹達に別れも告げずに、またしても旅に出るつもりなのだ。  といっても、それは彼がフウテンだからではない。今回同様、各地で暗躍するダエーワの陰謀と闘うためである。 「いやあ、ヒーローはつらいよ……」  背中に帯びたその哀愁もどこ吹く風と、夕陽に染まる故郷の街を守虎は独り嘯きながら人知れず去ってゆく……。  更須守虎は形而上学的なオフルマズドの改造人間である。彼の悪神達との闘いは、まだまだこれからも続くのである。                     (更須守虎はかく闘いき 了)
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