19人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちょ、ちょっと、お客さん、やめてください!」
「け、警察呼びますよ!」
見かねた店主夫婦も調理場から飛び出して来るが、腰の退けている夫婦に対して男達はメンチを切って凄む。
「警察だあ? ああ、呼べよ。呼べるもんなら呼んでみやがれっ!」
「あひっ…!」
そればかりか、席を立つと震える店主に歩み寄り、拳を大きく振り上げていきなり殴りかかろうとする。
「おうおう兄さん、ちょっとおいたがすぎやしねえかい?」
だが、その時、背後からその腕をぐっと掴み、万力のように絞めあげる者がいた。
「痛ててっ……な、なんだ、てめえは!?」
ビクともしない腕を宙に止めたまま、驚いた酔っ払いは後を振り返る……と、そこには少々風変わりな装いをした若い男が一人、にやにやと場違いな笑顔を浮かべて立っていた。
ベージュ地に格子縞のジャケットとパンツ、同じ系統色のソフト帽をかぶり、ジャケットの下には白のラクダシャツを着て腹巻までしている
「てめえ、ケンカ売ってんのか!」
「俺達にケンカ売るたあ、いい度胸してんじゃねえか!」
青年が掴んだ腕を放してやると今度はその青年に向かって殴りかかる酔っ払い達であるが、そこからはお約束のパターンだ。
「ち、ちきしょうっ!」
「お、おぼえてやがれっ!」
ドカッ! バキッ! と逆に殴り飛ばされると、彼らは負け惜しみを口にしながら、ほうほうの体で逃げって行く。
「お嬢さん、大丈夫だったかい? なあに、礼はいらねえよ。男として当然のことをしたまでさ」
悪漢を退治した青年は、ドヤ顔で波斯花に気取って声をかける。
最初のコメントを投稿しよう!