更須守虎はかく闘いき

「ええ！？　……いやあ、別にかまやしねえけど、ほんと案内するだけだよ？　母ちゃんに怒られるからね？」

　その頼みにイカ社長はニヤニヤといやらしく笑みを浮かべ、口ではそう宣言しつつも、これをよい口実に飲む気満々である。

「ちょっとお兄ちゃん、今帰ってきたばっかなのにお酒飲みに行く気？」

「ハァ……まったく、なんてヤクザな兄貴だろうねえ」

「そうだよ。前にも増して自堕落になってるよ」

　一方、それを聞いた波斯花や店主夫婦は目を見開き、フウテンにもほどがある彼に呆れ顔である。

「なあに、社会勉強だよ。んじゃ、ちょっくら行ってくるぜ。おい、とっとと案内しやがれ、このイカ野郎！」

　だが、守虎はどこ吹く風といった様子で言い返すと、イカ社長を急かしてさっさと店を出て行ってしまった――。