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「やいやいやい、妙に悪酔いする輩が増えてるって聞いて来てみりゃあ、やっぱりてめらか! だがな、そうは問屋が卸さねえぞ!」
そうと知るや、守虎は怪物相手にも怯むことなく、乱暴にドアを開けると威勢よく啖呵を切る。
「…!? 何だ貴様は!?」
むしろ驚いたのは怪物達の方だ。声を荒げる彼らに、続けて守虎は気風よく仁義も切ってみせる。
「わたくし、生まれも育ちも日本橋蛎殻町です。水天宮で産湯をつかい、姓は更須、名は守虎。人呼んで〝水天の虎〟と発しやす」
「水天の虎!? そうか、貴様はあの……」
その通り名に、毛むくじゃらのバケモノ――ダエーワの七大幹部の一人であるアエーシュマはさらに驚きを顕わにする。
「おうともよ。しかして、その実体は……変身!」
対して守虎はそれに答え、真っ白な長いマフラーを懐から取り出すと、掛け声もろとも勢いよく宙へ放り投げた。
すると、ひとりでにマフラーはクルクルと彼の体に巻きつき、まるでミイラか繭のように全身を包み込んでしまう……だが、数瞬の後、その包みが解けて首に巻かれる普通のマフラーへ戻ったかと思うと、腰まで丈のある純白のローブにゆったりとしたパンツ、ペルシア風の帽子に立派な顎髭のある男性の仮面を着けた守虎の姿がそこにあった。
「善神オフルマズドの名のもとに、善を表し善のために働く! 七大善神に見守られし我が真の名は救世主〝アフラ・マフラー〟!」
声高らかに名乗りを上げ、ヒーローらしくポーズを決めた彼の背後で、屋内なのにドドーン! と聖なる火が燃え上がって演出を加える。
じつはこの更須守虎、かつて水天宮を参拝した折に善神オフルマズド(※アフラ・マズダーとも)の啓示を受け、以来、悪心アフリマンとダエーワの侵略から世界を守るために日夜戦っているのである。
ちなみになぜ水天宮だったかといえば、この神社に祀られる水天はインド神話で云う竜王〝ヴァルナ〟であり、これが同じ起源を持つイラン神話では〝アフラ・マズダー〟であるからだ。
そして、彼はダエーワの悪魔と戦うため、純潔と新生の象徴である白い糸で編まれたマフラーを巻くことにより、善思と一体化して守護霊フラワシの姿をした戦士〝アフラ・マフラー〟へと変身するのである。
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