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しかし、付き合った当初から、二人の間には喧嘩が多かったかもしれない。夏海の愛嬌のある笑顔の裏には、短気という性格が隠れているなんて、付き合うまで見抜く事ができなかったのだ。
友人には、『刑事のくせに』と、冗談半分に言われた。それは返す言葉が見当たらなかった。
だけど、今回の喧嘩は別物だと理解はしている。夏海に対して、疎かになっているのは事実だと。
だからこそ、奮発してプレゼントを送ることに決めた。誰もが知っている高級ブランドのトートバッグ。前に夏海が欲しいと言っていた一級品だ。
プレゼントしたのは、クリスマスが過ぎた12月26日の朝。遅れている事を承知で、夏海の元に坂下は連絡も入れずに押しかけた。
サプライズ。これなら、さらに効果があるかもしれない。どうせなら、そういった効力を存分に利用しようと思った。
喜んでくれるかな。それでも、小さな不安な気持ちを拭えなかった。そんな不安を抱えてマンションに向かい、エントランスで部屋番号を押した。
しばらくすると、驚いた夏海の声が、スピーカーから聞こえた。
「どうしたの?」
「渡したいものがあるんだ。開けてくれないかな?」
「いいけど、仕事じゃないの?」
「さっき終わったところだ」
夏海もさすがに冷静になっていたのか、仕事の事を気にしてくれた。いつもこうなら助かるのだが、熱くなると抑える事ができないのは、彼女の特徴だ。
紙袋が大きいので、明らかに夏海に悟られているのはわかってはいたが、部屋の中に入れてもらい、リビングのソファーに着いた時、坂下は夏海にプレゼントを手渡した。
「この間は悪かった。よかったら受け取ってくれないか?」
「うん」
夏海は戸惑いながら頷いて、手を伸ばした。紙袋から品を取り出し、恐る恐る包装紙を開けた。そして、箱が見えた瞬間、彼女の目は、明らかに変わっていた。
「嘘でしょ? いいの?」
「まだ開けてないじゃないか」
坂下は笑いながら言った。
「でもさ」
「いいから、開けてみてよ」
そう促すと、夏海は箱を開けた。すると、彼女は歓声といわんばかりの声を上げた。
「やっぱり。本当にいいの? すごく高かったんじゃない?」
カードで12回払い。そんな事は言えるはずがない。
「そんな事どうだっていいじゃないか。夏海が前に欲しいって言ってただろ?」
「そうだけど」
「遅れて悪かった。反省してる」
「ううん。私こそ、ごめんなさい」
彼女がそう言った時、坂下は夏海を抱き寄せた。唇を交わしたあと、ぶつかった瞳は潤んでいた。
そんな目を見ると、自然と強く抱きしめていた。そこからは、流れに身を預けただけだ。
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