その人がやったんじゃありません

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 仕方ない。仕方がないんだ。  味のしない朝食を砂のように噛みながら、私は何度も自分にそう言い聞かせた。  私には子供がいる。息子と娘、二人は自分の命以上のものだ。  あの子たちには母親がいない。下の子が生まれて間もなく妻は死んだ。  私が守らなくてはならない。二人は幼く、産みたての卵のように無力だ。  側にいてやらなくては。だから……だから仕方がない。
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