恋はタイトロープ

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 その人は文芸サークルの先輩だった。  僕は、二つ先輩のその人に初めて会った瞬間、恋に落ちた。  綺麗でかわいくて、大学のミスコンに準優勝するほどの美人なのに、そういう女の子にありがちな気取ったところがぜんぜんなくて、明るくて気さくで、ああ、とにかくその人のすべてが僕を虜にした。  しかし残念ながらサークルには滅多に顔を出してくれない。この前、久しぶりに来てくれた時に、なんでも田舎から送ってきたとかで、サークルのみんなにみかんを配ってくれた。  食べてしまうのが勿体なかったので取っておいたらカビが生えてしまい、その緑色になってしまったみかんを前に、僕は泣いた。
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