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でも、今日は、今日こそは、ちゃんと言うんだ。
そう決意したのはこれで何度目か。
今日もまた、いつもと同じように木製の扉を開く。
カランコロン。
聞き慣れた心地いいベルの音がすると、それに合わせるように山下さんがいつもと変わらない笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃい、恵美ちゃん。」
山下さんは、あまり自分ことを語らない。
更に私自身が人見知りということもあり、半年通ってようやく聞き出せたことと言えば、名前と年齢。
それから、2年前に24歳という若さでこの店を開いたこと。それくらい。
それ以外ははぐらかされてばかりで、意外と謎が多い人物なのだ。
けれど、そんな優しげで、でもミステリアスな雰囲気に、更には大層整った顔をしているとなれば、当然女性からの人気を呼び、加えて料理も美味しいということもあって、山下さん目当てのリピーターは後を絶たないらしい。
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