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そんな中で、奇跡的に名前を覚えてもらっている私の定位置は、カウンターの右端。
今日もまた、案内されるがままそこに座る。
そして、いつも通り気合いを入れた。
家でも練習したし、脳内シュミレーションも問題ない。
……よし、言うんだ。
「恵美ちゃん、今日はどうする?」
最早メニューなんて開いてもいないのに、山下さんはそうやって、いつも律儀に確認してくれる。
本来なら、頼むメニューが決まっているのだから、後はあの言葉を告げるだけ。
それなのに、いつも勇気が出なくて言えずにいるのだから、情けないものだ。
でも、いつまでも言わないわけにもいかない。
人見知りだなんだと言い訳ばかりするのはもうやめて、今日こそは言わなくちゃ。
胸が、ドキドキする。
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