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"Poppy"
一人暇つぶしに散歩していた道すがら見つけた小さなカフェ。
ひっそりと佇むそれは、大通りから少し離れた人通りの少ない細い路地にあった。
極度の人見知りもあって初めは恐る恐る入ったそこも、半年以上経った今ではもう、週の半分近く通ういわゆる常連。頼むメニューもおおよそ決まっている。
でも、一度は憧れたことのある、あの、
「いつもの。」
なんてセリフは使わない。
きっと、カウンター越しにいつも笑顔で迎えてくれるマスターの山下さんになら、そんなセリフでも充分に伝わるはずだとは思う。
けれどいつもお店に来る度に、そんなセリフなんかじゃなく自分の言葉で注文をしているのは、実は、言えずにいるある言葉を告げようと試みているからなのだ。
まあ実際のところ、山下さんの輝かんばかりの笑顔を前にするとつい緊張してしまって、毎回失敗に終わっているのだけれども。
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