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天の川銀河の端っこ 5
だが、ここで事態が急展開する。
地球日本時間17時45分23秒、ここから10時間と15分23秒前、ミカ・アサイが自宅を出発する際に母親に託したあの筐体が、修理されて彼女の手元に返ってきたのだ。
これで勝つる!!!
……… と、彼女が思ったかは定かでないが、筐体を握りしめる彼女の瞳の奥にある星の炉を見るに、そう考えるのが妥当かと思われる。筐体のスイッチを入れて(おそらくその筐体を作成している会社の)ロゴマークが明滅すると、ミカ・アサイの炉はますます輝きを増した。
母親に礼を言うやいなや、ミカ・アサイは紺スカートの裾をひらめかせて自室へと戻った。
さあ! いざ!
──── …………
いや、でも、どうやって切り出せばいいんだ…?
……… と、彼女が思ったかは定かでないが、ひとまずは画面の前にいる諸君、落ち着きたまえ。それ以上、その量で食い入ると星間通信網に差し障りがある。紳士淑女たるもの、つねに優雅たれ。
ミカ・アサイは時間が止まったかのように筐体を握りしめて微動だにしない。いや、よくよく凝視してみれば、彼女の炉の煌々としている双眸が微かに揺れながら筐体を見つめているのが分かる。彼女の白い五本の指と掌は、筐体を何度も握り直し、画面を滑るはずの親指はうろうろと宙をさまよう。
あとはその親指で筐体の中にある機能を起動し、アキ・ヒビヤにこう言うだけでいいのだ。
『明日、一日付き合ってくれない?』
それが、その一言が。
ミカ・アサイはぎゅっと一度、強く目を瞑り、次に開いた時にはさまよっていた親指を下ろし筐体を操作した。
彼女が筐体に叩き込んだメッセージは。
「今日、どうしたの? 具合悪かったの?」
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