1285人が本棚に入れています
本棚に追加
extra:17《出歯亀と底なし沼と二重丸》
「ね? お願い。…班長が面倒なら、私が引き受けてもいいから」
橘花高校の正門のすぐ近くで、校内でも一、二を争うほどの美少女である辻村に、上目遣いでお願いされているこの状況。通りすがりの男子生徒が、僕に羨むような視線を向けてくる。
──絶対、わざとやってるな、これ…。
辻村のしたたかさには、もはやため息しか出ない。
「…わかったよ。一応、話せそうだったら誘ってみる…」
「ホント? ありがとう」
渋々請け負えば、辻村が嬉しそうに微笑んだ。
──あの2人も気の毒に…。
辻村の悪趣味の犠牲者になってしまった2人に、僕は心の底から同情しながら、正門をくぐった。
* * *
渋々引き受けたものの、元々クラスが離れているせいで、手塚に声をかける機会がないまま、昼休みになってしまった。
時期が時期だけに、今日は教室のあちこちでも、修学旅行の班についての会話が多い。
──手塚のことだから、もう、サッカー部の仲間と組んでいるんじゃないだろうか…。
最初のコメントを投稿しよう!