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extra:17《出歯亀と底なし沼と二重丸》
──まあ、僕には関係ないけど。
レポートで点数の底上げを狙うなど愚の骨頂。日頃からやるべきことをやっていれば、内申点なんか自然とついてくるものだからだ。
「…まだ、誰とも組んでない」
僕と同様、きちんとやるべきことをやっている辻村だから、正直に答える。…これが、点数稼ぎを狙う連中からの質問だったら、僕も相応の態度であしらうところだけど。
そんな僕の内心など、すっかりお見通しらしい辻村が、満足そうに頷く。
「良かった。じゃあ、私と組んでくれる?」
語尾にクエスチョンマークこそついていたが、断られるとは微塵も思っていなさそうな表情だ。──まあ、実際に断るつもりもないが。
「構わないよ。…メンバーは辻村だけか?」
「ううん、私と平沼ちゃん。…でね、ここからが本題なんだけど」
どうやら、辻村の目的はここかららしい。辻村は少しだけ、周囲に気を配ってから切り出す。
「私から誘う訳にはいかないから、紺野くんの方から、さりげなくメンバーに誘って欲しいの。──手塚くんを」
「手塚?」
何で手塚なんだ──と思った途端、頭の隅に何かが引っかかった。
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