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extra:17《出歯亀と底なし沼と二重丸》
──辻村が、平沼を誘うってことは…、
「…なあ、辻村、もしかして…」
「あら、紺野くんも気づいた?」
辻村が、大きな目をいたずらっぽく輝かせれば、体育祭で、辻村が持ってきた毒薬もどきのブレンド茶を飲んで悶え苦しむ手塚に、自分の分の烏龍茶を渡し、かいがいしく背中をさすってやっていた平沼の姿を思い出した。
「ちょっとね、体育祭の次の日に、あのメンバーも含めてカラオケ行ってきたんだけど、その時もあの2人、何となくいい雰囲気だったのよ」
──なるほど、そういうことか…。
「…まあ、理由はわかった。協力するのも構わない。けど…おれ達が余計な世話を焼いてやる必要はないんじゃないか?」
確かに、手塚は良い奴だけど…と躊躇すれば、辻村が肩を竦める。
「やだ、紺野くん、何を言ってるの。…くっつきそうでくっつかない2人を、近くでこっそり観察することに醍醐味があるんじゃないの」
「………」
──要するに、これは“余計なお世話”ではなく、単に“辻村の趣味”らしい。
「…辻村…」
それを世間では“出歯亀”と言うのではないだろうか…と、その悪趣味さに呆れていれば、辻村は両手を合わせて、僕を上目遣いに見つめる。
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