scene:00

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     近い。  そう言おうとしたはずなのに言えないのが、なぜなのか──状況の理解は、まばたき2回分遅れて、僕の脳内にやってきた。  キスされてる。  同級生の、それも男に。  …いや、それだけじゃない。  同級生と言っても、目の前のコイツとマトモに関わりを持ったのは、昨夜。  しかも、会話をしたのは、ほんの数十分前という──およそ、キスされるような親密な関係性など、存在しない相手から。  あまりの衝撃に硬直していると、閉じていた唇を、温かく濡れたものがなぞる。その感触にゾクリと体が震えた瞬間、舌で唇をなぞられたのだと、わかった。  「………っ!」  喉の奥で、声にならない悲鳴を上げながら、僕は、意識が逆行するように遠のくのを感じた──。
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