「異常」

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「次はこれを食べてみましょう。」 「今までにない味だ。斬新な甘みと苦味の組み合わせ、しかしその根底には、昔ながらの懐かしさがある。まるでどの時代にも存在する、男女の恋心。」 「嫌いではない味だわ。」 男は後悔する。 どうしてこんな素晴らしい食事方法を もっと早くに認められなかったのだろう。 ここは飽きることない味覚の宝庫。 食べてもページは元通り。 食欲は満たされるし、知識も増えるのだ。 何より この人と一緒にいられる喜び!!! 男は今  全身全霊で幸せを噛み締めていた。 『異常』 それは   神でも  バイブルでも  学者でも  誰が決めたわけではない。 それは自分だ。 その不自然さに気づいた時 世間一般的に『異常』とみなされる行為は 道を踏み外さないことを条件に 自分にとって『いつものこと』とみなされる。 そう    今 ここは 自分とあの人にとっての 『いつものこと』なのだ。
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