「異常」

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「異常」

男は、女に恋をした。 女は、いつも空間の隅っこで、本を読んでいた。 他の集団に交わることなく 来る日も来る日も 本を読んでいた。 他のどんな娯楽にも目を向けず 来る日も来る日も 本を読んでいた。 暖かな日差しの中でも  降りしきる静寂の雨の中でも  混沌とした雲の中でも 女の姿は映えた。 男は女に興味惹かれた。 放課後  女が必ず書庫へ行くことを知った男は  女を待ち伏せした。 あともう一歩   あともう一歩 近づくことができるように 知的な香りに包まれて  男はその時を待った。 重い扉が開き  革靴の音が響く。 男は息をころした。 女は軽い足取りで本を選んでいく。 その小さな両手が複数の書物で埋まる時 女はステンドグラスの窓際に腰掛ける。 光が差し込み  七色に变化する。 その神々しい姿に 男は見とれた。 そして女は  古びた茶色い本を手に取ると
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