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「聞こえてる?」
「えっ、あっ、そのっ」
αに再び声を掛けられて僕はアワアワとしてしまう。
本当にこういう所までダメダメだ。
「だ、大丈夫…です」
戸惑いながらも返事をすると、相手は「本当に?」と訝しげだ。
「無理せずに保健室へ行った方がいいよ」と手を引かれる。
「綾小路!」
するとそこへ別の声が掛けられて、その人と僕は足を止めた。
視線を向ければ綺麗なΩが数人と、その後ろにはαが数人。
この人、綾小路っていうんだ。
「何してるんだ?」
背の高いαが近づきながら訊いてきて、僕の手を繋いでいた綾小路くんが「この子、体調悪いみたいでさ」と答えた。
「ふぅん。そうなんだ」
背の高いαが視線を向けて来て、僕はビクッとしてしまう。
けれど当たり前だけど、僕に興味無いその視線に安堵したものの「ねぇ、その子大丈夫そうだよ?もう行こうよ」という別の声に敏感に反応してしまった。
視線を向ければ、案の定Ωの中でもトップクラスであろう人達が不満げにこちらを見ていた。
これはヤバいヤツに違いない。
目立たないのが得策だ。
僕は綾小路くんの手を然り気無く離した。
「あのっ、もう僕、大丈夫です」
「えっ?本当に?でも顔色が…」
「おい。何してるお前ら」
僕の顔色を心配して覗き込もうとした綾小路くんの向こうから、聞き覚えのある声がした。
ハッと全員が視線を向けた先に居たのは、やっぱり湖城先生だった。
「これから式が始まるっていうのに、俺のクラスだけ空席だらけだ。早く戻れ」
面倒臭そうにやれやれと溜め息を溢す。
それから全員を見回した最後に僕を真っ直ぐ見てきた。
「どうした?」
「先生。この子、体調が悪いみたいで」
先生は僕に訊いたみたいだけれど、代わりに綾小路くんが答える。
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