プロローグ

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プロローグ

…これは夢だ。 こうして時折あの時の記憶が甦って、見たくもない夢を見せる。 それは、僕がまだ中学3年生の頃のことだった。 「なぁなぁ、:星倉(ほしくら)って:発情期(ヒート)まだなんだってよ」 その言葉に僕は思わず足を止めた。 その時の僕は教師から頼まれ5限目の体育の準備へと少し早目に向かう途中、猫を見かけてついその後を追いかけていた。 小学生の頃に読んだ本に、猫を追いかけた主人公が穴に落ちた拍子に異世界に旅立ってしまう話がある。 そこで素敵な人と出会いを果たして恋に落ちる物語。 異世界に行くことは無いだろうけど、単純にその白い猫を撫でたかった。 そして追いかけるうちに楽しくなってきたし、猫が途中振りかえるものだから本当に未知の世界へ行けると半分夢見たのかもしれない。 なのにその結果、僕は聞かなくてもいいことを耳にしてしまったんだ。 中庭から校舎の裏へと続く場所で、名前を上げられた僕は動くことも音を立てることさえ出来なかった。 まさか僕が居るなんて知らないクラスのα達は声を潜めることさえない。 遠慮することなく小馬鹿にした口調で会話を続けた。 「えっ、マジで?!中3にもなってまだとかアイツ出来損ないじゃん」 クラスメイトの声がやけに大きく聞こえた。 僕の話題が出るなんて思いもしなかったし、それが性に関する事でだなんて…。 僕は唇を噛み締めて、痛む胸に手を当てた。
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