1654人が本棚に入れています
本棚に追加
そういう訳で入学式会場へ向かう廊下を並んで歩く。
先頭はもちろん先生で、その後ろに出席番号順で生徒が続く。
僕は並び順でいくと結構前なので、先生が近い。
こうして並んでみれば先生の背の高さや背中の大きさが分かって、αが如何に恵まれているのかを改めて実感させられた。
αとΩが二列に並んで歩く光景は、小学生からの事で見慣れていたとはいえ、やはり高校生ともなると違う。
エリート揃いのαのオーラは尋常じゃない。
なんだか頭がぽやぽやしてきて、α酔いを起こしそうになる。
αに慣れないΩで、体の弱い個体がたまに起こすやっかいな症状だ。
案の定、僕は出来損ないと周囲から陰口を叩かれるだけあって、何度かα酔いを起こしている。
対処法は分かっているとはいえ、辛い事に違いない。
僕は一瞬目を閉じ頭を軽く振ると、列を抜け空いた窓から新鮮な空気を肺へと取り込んだ。
「はぁっ…」
「大丈夫か?」
「え?!」
すると聞きなれない声が明らかに自分に向けて掛けられた。
先生かと思ったけれど明らかに違う声で、僕は不思議に思いながら横を向いた。
そこには背の高いαが立っていて、僕の体調を気にかけてくれている様子だった。
「保健室に行くか?」
紅茶の様な色の髪と目をした整った顔で、αの中でも美形の部類だと分かる。
αに甘く優しい声で心配されるなんて、小学校低学年の時以来かもしれない。
湖城先生の美形具合といい勝負なのでは…なんて、酔いが治まってきたせいか、そんなことを考えてしまった。
この人も凄く優秀そうだ。
最初のコメントを投稿しよう!