プロローグ

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ただでさえΩという性で世間からは役立たずと思われているのに、僕は何か突出した特技や才能を持ち合わせていない。 そのせいで他のΩの子達からも時折憐れんだ視線を受けることもある。 ヒートが来なければ日常生活に支障はない。 それはある意味でいいことだ。 だから僕は例えこの先ヒートが来なくても、βの両親みたいに普通に生きていく。 男Ωだから男αから求められなければ結婚どころか、お付き合いさえ望めない。 男α以外、男Ωを伴侶…つまり:番(つがい)たいなんて思わないんだから…。 ずっとひとりは少し寂しいけれど、それが僕の運命だと受け入れて頑張っていくしかないと最近は思ってる。 僕の性は『Ω』…。 例えヒートが来なくても、僕は一生Ωという性を受け入れて生きていかなくちゃいけない。 お父さん、お母さん。 Ωなんかに産まれてきて、ごめんなさい。 男Ωは世間からの視線が特に厳しいけれど、それでも僕を愛情たっぷり育ててくれたお父さん、お母さん。 そんな大好きなお父さんとお母さんにこれからも先、心配ばかりさせる存在になるかと思うと胸が苦しい。 ダメΩで…本当にごめんなさい…。 できることならお兄ちゃんみたいに普通のβに生まれたかった。 「なんで僕はΩなんだろう…」 僕はその場に座り込んで涙が止まらない顔を両手で覆った。 ・・・そんな辛い記憶の半年後。 僕の心は、あの時とは真逆だった。 ホワホワ暖かくて思わずぼんやりしそうな春。 僕は真新しい制服に身を包んでいた。
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