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3、思い出話をしよう
「じゃあさ、思い出話でもしようよ」
「思い出話って……いつの?」
「加藤が私の悩みを聞いたときの話が良いな」
「ああ、そんなこともあったな……」
あのときの俺は、荒れてたなぁ……
荒れてる状態で、悩みを聞いてたんだもんなぁ……今考えたら、すごいことだよ。
「中学三年生の頃……私は、良い学校に行けって親に言われてた。その時の私にとっては、すごくプレッシャーだったんだ。それで泣いてたら、加藤が声をかけてくれた。」
「あのときか……下校途中で忘れ物をしたことに気がついて、教室に行ったな。そしたらさ、白井が誰も居ない教室で泣いてた。ちょうどそのときは、白井の席が俺の隣だったから、声をかけないわけにはいかず……」
女の子が泣いているときは声をかけてはいけない。
みたいなことを聞いたことがある。でもさ、さすがに隣で泣かれたら声をかけないと……ってならないか? だってさ、自分の席の引き出しに忘れ物したんだもん。その忘れ物を取ろうとしたら、隣に白井がいる状況になるじゃん! 仕方ないやん!
「嬉しかったよ……誰にも相談できなかったからさ……。声をかけてくれたときは、やっと相談できる人ができたのかな……とか思ったりした。ごめんね……あのときは……ただひたすらに自分のことばかり話してた……」
あのときは、かなり疲れたな……
白井も悩んでいるんだなって、知ることができた。
それは……なんか嬉しかったかも……。
白井っていつも成績が良いから、進学とかでの悩みがないんだと思ってた。でも、逆だった……。
母親と父親からの圧がすごくて、成績を伸ばしていた。それに「この高校に行けなければ、家から追い出すぞ」とまで言われていたらしい。
学校も指定されていたということだ。
そんなことをされたら、進学で悩まない方がおかしい……。
ちなみに白井は……悩んだ結果、俺と同じ学校を選んだ。
どうしてそんな誤った選択をしてしまったのか……それを聞いても、白井は怒るばかりで、教えてくれることはなかった。
どうして……あんなに怒るわけ?
「でも、すっきりしただろ?」
「うん。かなりすっきりしたよ」
「それなら良いじゃん。まぁ、俺は白井の悩みを聞くだけで、何か良いことを言ったわけではないけどな」
「え? そんなことはないよ?」
あれ? 俺なんかしたっけ?
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