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「 …おばあちゃん 」
病院から帰ってきた祖父の側から、離れない祖母は言った。
「 じいちゃん、お帰り 」
返事してあげてよ、おじいちゃん。
「 一人置いていかんといてや 」
見たことない祖母の涙が畳へと、祖父が横たわる白い布団へとこぼれ落ちる。掌を痛いほど握りしめて悲しむ祖母に、駆けつけた祖父の兄妹達は静かに歩み寄り背をさする。
「 …早過ぎるで、てっちゃん。まだ逝くには早すぎる 」
「 戻って来い、てっちゃん 」
久しぶりの親戚の集まり。なのに、いつも笑顔でみんなの輪の中に居る祖父の姿だけがそこには無くて、涙を啜る音が悲しみを表すかのように児玉する。
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