ばあちゃんと孫

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ばあちゃんと孫

 義父の染色店は、かつて10人以上雇用していたという。だが今は格安のプリント印刷された商品が出回り、本格的な染色を求める客の需要が減り家族だけで仕事している。忙しい時には猫の手も借りたいほどだが、暇なときは、この先、食べていけるのだろうかと不安になる。  子どもが二人生まれる。二人とも男の子で、嫁は子育てに追われ仕事どころではなくなる。  息子たちが、まだ幼い頃、本当に忙しい時は息子たちを俺の実家に連れて行った。俺の実家は染色店から車で10分程度の距離で、銀行員だった父は退職し、デパートの化粧品売り場でビューティーアドバイザーという仕事をしていた母も退職していたので、息子たちを連れて行くと二人は喜んで遊び相手になってくれた。母は子どもが好きそうな料理を作り、父は子どもたちを外へ連れ出し遊ばせてくれた。  夜、俺が息子たちを迎えに行くと、母は必ず同じことを言った。 「孫と毎日のように会えるのは本当に幸せ。だけど、アチラのお母さんも少しくらい孫の面倒をみてくれてもいいのに。相変わらず麻雀してるんでしょう?どういう神経しているのか、まったく呆れるわ。」  息子たちは小学生の低学年までは、俺の実家で遊ぶことを嫌がらなかったが、大きくなるにつれ行きたくないと言い出した。彼らの祖母、つまり俺の母の世話焼きに愛想(あいそ)()かしたのだ。  その反対に、家のばあちゃん、嫁の母は、孫である息子たちに寛容だった。麻雀しているところへ息子たちが行き、客がつまむための果物や菓子を食べたり、客たちと戯れたり、足元で息子たちが遊んで疲れて眠ったりしても、それなりに放任していた。積極的に意見を言うことはなく、息子たちが空腹であれば何かを食べさせてくれたし、息子たちがボンヤリしていたければ、いつまでもボンヤリさせてくれたのだった。
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