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「会わねぇなんて言ってねぇだろ……ちゃんと連絡すっから」
ずっとスマホの画面に向けていた視線をようやく先生のほうに向けて、徐ろに手を伸ばす。けれどその手はおろか指先すら本人に触れることなくスッと引っこんだ。
掌をじっと見つめたかとおもいきや、オレのほうをじろりと睨む。
いやそんな「オレ、なにかしちまったか?」みたいな目で見られても。自分の言動を振り返ってみなよ、まったく……。
四楓院先生はといえば、そこまでご機嫌斜めにはならなかったみたいで、給湯器のところで人数分並べたカップにコーヒーを淹れているところだった。
「そういえば、今日はバイトない日なの?」
「なくねぇよ、これからだ」
「あー……もしかしてお昼食べに寄っただけ?」
「悪いか」
そう言うと眉根を寄せる。
なんだかんだ言いつつ、わざわざ立ち寄るのが保健室なのは、少しでも四楓院先生に会いたいからなんだろう。ほんと、朔って素直じゃない。そういう素直さを全面に押し出していけば、もうちょっと可愛げがあるのに。
「せっかくスマホ持ったんだし、連絡ちょうだいね?」
「……気が向いたらな」
「オレもメッセージ送るから。返事してね?」
「……気がついたらな」
「一回ぐらい、英治さんのトコにご飯食べ行こうね?」
「……覚えてたらな」
どうにか反応を得ようと色々言ってみるけど、朔の返答はイマイチこう……ノリが悪い。ひとつ返事をする度に眉間にシワが寄っていく。
わかってはいたけどさ……。
そんなオレの心中を察したのか、コーヒーの入ったマグカップを人数分持って近寄ってきた先生が、オレに目配せする。
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