1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
ノイズ
一緒に同居している彼のスマホにラインのメッセージが届いた。
誰から届いたのか分からないように、“メッセージが届きました”とだけ表示されている。
最初は、別になんとも思わなかったし見ようとも思わなかった。
だけど、あのラインが来てから……。彼の行動や言動に違和感を感じるようになったのは、今朝のことだ。
いつも同じように朝起きて、彼と自分の分の朝食を簡単に作る。朝食が出来上がる頃、彼が起きてくる。
いつもと変わらない。朝のルーティンだ。
一緒に朝食を食べて、何気ない世間話をしながら朝を過ごす。
しかし、この日の朝は少しだけ違った。
いつもなら、わたしの話を聞いては相槌を打ってくれるのに、その日に関してはどこか上の空のように気乗りしない返事しか返ってこなかった。
「気分でも悪いの?」
普段と様子が違う彼に、わたしは心配の声をかける。
「いや、べつに大丈夫だよ」
彼は優しい笑顔を浮かべて、そう言った。
「そう……。ならいいけど」
彼のことを信用、と言ったら大げさになるけど、彼の言葉を信じてその日の朝は終わった。
ーー五日後ーー
わたしは、彼が用事で出かけている間に、部屋の掃除をした。先にリビングに掃除機をかけてゴミを吸い取っていく。
共有で使っているローテーブルの下にも掃除機をかけようと、テレビ側から移動する。
ふと、ローテーブルの前に置いているソファに目がいく。ソファの上に彼のスマホが置いてあった。
「忘れたのかな?」
わたしは、彼のスマホを手に取り、ローテーブルの上に置いてあげた。ここならすぐに気づくはずだから。
わたしは気を取り直して、掃除を再開する。
ある程度、掃除機をかけ終わったら、次は窓拭きもしようと道具を取りに収納庫へ向かう。
バケツ(水入り)と雑巾、窓拭きようの洗剤を手にリビングへ戻る。リビングに戻ると、彼のスマホが鳴っていた。
「えっ、今いないのに」
どうしようと困り果てるわたし。
勝手に出たらいけない気もするし、かと言って、彼が務めている職場からだったら……。
そう頭を巡らせる中、着信音は鳴り止まない。
最初のコメントを投稿しよう!