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ーーー緊急の電話かな?
緊急の電話だったら大変だと思い、彼には悪いが電話に出ることにした。
スマホを手に取り、通話ボタンを押す手が止まった。
着信相手の名前がーーー知らない女性の名前だったから。
わたしの頭がフリーズを起こす。
知らない女からの電話。
知らない女からの電話。
知らない女からの、電話。
電話をかけた相手が諦めたのか、着信音が止まった。
「えっ……? いや、まさかね。たまたま、職場で同じ苗字の人がいて……それで名前ってこともね」
自分に言い聞かせるように言う。
しかし、彼のスマホから一通のラインが届いた。
ついこの間も同じことがあったような。
“メッセージが届きました”と、スマホの画面に表示されている。誰からのメッセージか分からない。
見てはいけないーーー。
そう頭では理解しているのに、カラダが手が勝手に動いて、彼のスマホのメッセージ画面をタップしようとした時、玄関のドアが開く音がして、わたしは慌ててスマホをローテーブルに置いて、窓へ向かった。
「ヤッベー! スマホ忘れてさー」
彼が慌てた様子でリビングに入って来た。
わたしは、いつもと変わらない様子を装い、「テーブルに置き忘れてたよ」と彼に教えた。
「あ! ホントだ! サンキュー!」
「あ、そうだ。あと、さっきねーーー」
「悪い! 会社から電話来てたっぽいから、行くわ!」
彼はまた、慌ただしく玄関から出て行った。
残されたわたしは、わたしの感情に黒いモヤがかかるのを感じていた。
それと同時に、“アイツは何かを隠している”と、確信づいた。
その日の夜、彼が家に帰って来たのは、夜の二十二時前のことだ。
わたしは平静を装いながら、彼に接する。
「おかえりなさい。ご飯食べる? それとも、先にお風呂にする?」
「……いや、飯は食べてきたから。風呂入るね」
「……そっか」
彼はそそくさと脱衣所へと行ってしまった。
確実に怪しい。
彼が風呂に入っている間に、スマホのラインを見てやる。
ホントはやりたくないけど、彼の不振な行動の理由が知りたい。
それで、何もなかったらいいの。何もなかったらそれでいい……。
彼がお風呂に入ったのを見かねて、わたしは彼の脱いだズボンのポケットからスマホを抜き取る。
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