1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
彼がお風呂から上がって来ないうちに、スマホを操作する。ロックはかかっていないようで、すんなりとラインを見ることができた。
「…………あった」
知らない女の名前らしきものがあり、その中身を見る。
「えっ……そんな……」
『今日もありがとうね! とっても楽しかったよー! でも、まさかスマホをおウチに忘れてくるなんて思わなかったよ〜(汗)
全然、待ち合わせ場所に来ないから電話しちゃった! 大丈夫……だったよね?
カノジョさんにバレてないよね?
あーあ、早く一緒に暮らしたいね。
それじゃ、また来週ね〜!
好きだよ(照) おやすみ』
わたしの中で何かが崩れる音が聞こえる。
ガラガラと、瓦礫が崩れるような音がする。
わたしは、スマホを片手に脱衣所を出た。
彼は呑気にお風呂に入ったまま。
「おい! オレのスマホ勝手に持ってっただろ?!」
お風呂から上がって来た彼が、鬼の様な形相でリビングに入って来た。
わたしは、ソファでココアを飲んでいた。彼が探しているスマホはローテーブルの上だ。
「……ねぇ」
「なんだよ」
不機嫌な彼。ただ、どこか落ち着きのない様子。
「わたしのこと“愛してる”?」
「はぁ?」
彼の間の抜けた声が耳に入る。
「わたしのこと“好き”って、聞いたの」
「何言ってんだよ」
「お願い質問に答えて。わたしのこと好き?」
「何で言わなきゃならないんだよ。お前、おかしいぞ?」
ーーーどうして言ってくれないの?
「おかしくないよ。ただの愛情確認」
「意味分かんねぇよ」
ーーーどうして、その一言が言えないの?
「お願い、わたしのこと“好き”って言って。それだけでいいから」
ーーーお願い。あのラインはウソだったって、錯覚させて
「……わかったよ」
彼はわたしのお願いを聞き入れてくれた。
わたしは彼の言う言葉を待つ。心臓がうるさくリズムを刻む。
彼が、口を開いた。
「嫌いじゃないよ」
最初のコメントを投稿しよう!