肉体がなかった頃

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三井さんは私を見つめた。 私はその大きな目を見つめ返しながら、思考をまとめようとする。 彼女が欲しがっている言葉を見つけたくて。だけどなにを言えば三井さんが喜ぶのか、安心するのか、全然わからなかった。 「私は、そうだね、こんなことやめなよと思うよ。三井さん自身のためにね」 ありふれた言葉しか出てこなかった。三井さんの顔は一瞬こわばったが、すぐに笑顔になった。どう見ても取り繕った笑顔。 間違えたな―― 年が明けた今でも、三井さんになんていうのが正解だったのかわからない。
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