2話

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2話

絶望の宣告をされた3日後 幸香は、中学を卒業する。 アイロンがけされた綺麗な制服を見に纏い 大切な思い出の体育館に向かう。 まるで、泣くのを辞めると悲しい覚悟を決めた 幸香の様に桜の花びらは全て舞い落ち、 雨の雫が降った。 幸香の「卒業」という特別な行事は、 天の神様に祝福されなかったようだ。 幸香は、卒業証書を右手に持ち 左手は親友の 立花 杏奈の手を握っていた。 教室は卒業生で溢れかえっている。 あるものは声を上げて友達に抱きつく者や 高校が別れた友達と、笑顔で写真を撮る者。 1人で窓の側に立ち、遠くを見つめている者。 皆、色んな表情を見せている。 人が当然のように備え持つ「感情」。 幸香と杏奈は笑顔で、将来を語っていた。 「幸香は、月満高校に通うのよね?」 「うん。杏奈は緑豊高校か.... 会えないね。」 幸香が通う月満高校は、 杏奈が通う緑豊高校に対し県が違っていた。 増して、2人とも吹奏楽部に入っており 高校に入っても両方入るつもりらしい。 緑豊高校も月満高校も、吹奏楽の強豪校の為 他の部活に対し、休みが少ない。 会えるのも年に何回かだろう それを見据えた、表情は変えないものの瞳が揺れた幸香を見て、杏奈は涙を流した。 ギュッと自分の顔が隠れるぐらいに、 幸香を抱きしめる。 「何言ってんのッ私から会いに行くから!」 感情豊かな杏奈を遠慮がちに幸香は 苦笑し、抱きしめ返した。 苦しそうに眉をひそめキツく抱きしめる。 杏奈は幸香にとって 小学からの数少ない親友だった。 その親友が離れるのが寂しいのだろう。 その光景を見ていた幸香の母。 涙花を見せないように、泣くのを我慢している 幸香。 母だから、娘の気持ちは分かる。 泣きたくて、泣きたくてたまらないんだろう。 親友を傷つけないように必死な幸香を見て 母は、片手で顔を覆い涙を零した。 なぜ、まだ感情豊かな子供を苦しめるのだろうか なぜ、涙花病は幸香を襲ったのか 理由がない事は、母自体分かっている。 しかし大切な幸香を襲う病が許せなかった。 何かに理由をつけたかった。 母は、そんな哀れな自分が堪らなくなり また涙が溢れた。 幸香は、母の涙が 嬉し涙なのか、悲し涙なのか もう、分かっていたのだろう。
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