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頭の上で振動がうるさい。眠りにあった意識を揺り起こしたと思ったら、今度は起きろと言わんばかりにぶうぶうと唸る。
「んだよ……」
あくびが口をこじあげて、俺は布団の中で伸びをした。そのまま手探りでスマホを取るとまだ六時過ぎ。あと三十分は寝られたのに。
メッセージ画面を開くと、外を見ろだとかニュースを見ろだとか写真だとか、何やら色々と届いていた。
半分閉じたままのまぶたで窓まで三歩。カーテンを開けると冬特有の色のない光が目に飛び込んだ。手でひさしを作って眺めるが、眼前に広がった光景はいつもと同じ。
何を騒いでたんだ。視線を動かしてようやく違和感に気がついた。
灰色だ。
ばっと下を見ると、家の前の道路が灰色に染まっている。何だあれ。サッシの冷たさも無視して窓から身を乗り出すと、何かが地面を埋め尽くしさていた。見える範囲の地面は全てその灰色で覆われている。
慌ててベッドに置いたスマホを見ると、グループメッセージには同じような驚きと写真が並んでいた。読み進めていくと一番下に新しい写真が出てくる。
「文字……?」
林が送ってきた写真は、地面をアップで撮ったものと、そのうちのひとつを持ちあげたもの。
地面の灰色の一つ一つは、立体的な言葉だった。ひらがな漢字、時折カタカナ。いくつかが数珠つなぎになっていて、一つの台詞を作っていた。
「『ごめん 俺が悪かった』……?」
なんだそれ。
その答えはみんなが求めていて、誰も正解を知らなかった。
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