島崎くんへ。

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 数年後の成人式の日、セレモニーが終わった後、同級会があった。  私も島崎くんも出席したけれど、県外の専門学校に行っていて、久しぶりに会ったさーちゃんとばかりしゃべっていたから彼とはあまり話せなかった。  ちょっとだけ話ができた時にはお互いの大学生活の話を主にした。  島崎くんの彼女の写メを見せてもらったし、私が好きな人の写真をスマホで見せたりもした。  ちょっと大人びていたけれど、笑顔は当時と変わっていなかった。  その時は元気そうだったのに……。  実は島崎くんに聞きたかったことがあった。  明るく活発なさーちゃんの後ろにくっついているだけだった私の、どこを好きになってくれたのかということ。  それから、言えなかった言葉がある。  中学の頃、私が好きだった岡部くんははさーちゃんのことが好きだった。  他にもさーちゃんのことが好きだった男子も何人かいたらしい。  そんなさーちゃんではなく、私のことを好きだと言ってくれて、すごくうれしかった。  島崎くんの想いには応えられなかったけれど、島崎くんは私の人生で私を最初に好きだと言ってくれた特別な人でした、と。  これから先、お互いが誰かと結婚して家庭を持って。  ずーっと先の未来で、同級会とかで一緒に呑む機会があったら。  思い出話としていつか聞けると思ってた。  ……言えると思ってた。  もうその機会は永遠にこないけれど、せめてあの頃の彼に失望されないような人生をこの先歩んでいこうと、島崎くんがいるであろう空を見上げて、強く思った。
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