言えなかった言葉
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「洋子、俺だよ、分かるか」 男はベッドを覗き込み、不安そうな笑顔を滲ませた。その上ずった声に私は戸惑う。 洋子。私の名だろうか。 覚えがない。私は身を起そうとして、傍らの若い女性看護師に止められた。 頭の中はぼんやりと像を結ばない。思い切って口を開く。唇が渇いていた。 「洋子って、私のことですか」
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