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「お邪魔しました」
新年会ともつかない新年会がお開きになった。和史と壮介曰く、一応打ち合わせもしたらしい。千都香は適当に参加しつつ、気が置けない男三人の会話をBGMに、やらねばならない仕事を片付けた。
「じゃあ、ガレットをよろしくね」
「でしたね!あとで頂きます」
和史に最後にそう言われ、ありがとうございました、と手を振って見送る。皆で片付けたのでそれほどする事は無いが、ガレットの件は片付けねばならない。
「先生」
「あん?」
「長内さんのお土産のガレット、食べます?」
千都香が聞くとソファにだらっと座った壮介が、うんざりした様な声で答えた。
「甘いのはもう結構だ」
「私も……明日食べますかね……あれ?」
台所のテーブルに目をやると、ラップされたパイの横に紙袋が置かれていた。
「……なに?……え。」
紙袋を手に取って、中を見ながらソファの傍に行く。中には、説明書と紙で出来た金色の冠が入っていた。
「何だそれ」
「あ!!」
一読して固まった千都香の手から、壮介が説明書を取り上げる。
「……『ガレット・デ・ロアの楽しみ方』?
……『この伝統菓子にはフェーブと呼ばれる陶器の人形と、冠が付いています。ガレットの中に人形を入れ、切り分けて食べた時に当たった人を、王様または王女様とします。王様または王女様は冠をかぶって、誰かひとりを選んでキ』っ……」
壮介のぶつぶつ朗読は、そこで止まった。
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