32人が本棚に入れています
本棚に追加
「おいしーい!ちぃちゃん、おいしい!」
「ネタのお菓子かと思ったけど、普通に旨いじゃん」
「……まあまあね」
「美味しい?良かった。伝えておくね」
三者三様の感想の後は、黙々と食べる。アーモンドを探しながらなので、まるで蟹を食べている様に静かだ。
「無かった!」
「私もはずれ」
「まなは?」
食べ終えた大人三人が、愛香をじっと見る。
「まなも、はずれちゃった……」
皿の上には、小さな菓子くずしか残って居ない。……と、いうことは。
四人の目が残り二切れに注がれた。
「まな、残ったガレット、持って帰ってお父さんと食べて。冠とフェーブも一緒に入れとくね」
「ほんと?!」
千都香に言われて、愛香の目が輝いた。
「おみやげ賛成ー!」
「どんなフェーブが出て来たか、今度見せてね」
「ありがとう!!……あ、でも」
愛香は困り顔で千都香の袖を引いた。
「ちぃちゃん、名人は?名人もこれ食べてないよ?」
「名人は、前に当てた事が有るから。まなにあげてって言うと思うよ」
「……当たったの?」
「うん」
正確には偶然「当たった」のではなく、入っていると分かっているガレットを全部食べて強引に「当てた」のだ。出て来たフェーブと冠は千都香に「やる」と渡されたので、今も大事に仕舞ってある。
「じゃあ……ありがとう!おことばにあまえます!」
「うんうん」
「甘えて甘えて!もっと甘えて!!」
「そうしてくれると、名人も喜ぶと思う……それに、」
千都香は冠を両手で持って、愛香の頭にそっと乗せた。
「この中では、まなが一番似合うから」
最初のコメントを投稿しよう!