捨てる神あれば拾う神あり

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「刑事さん……」 萌と空は同時に呟いて目を合わせた。 「先生から少しのお時間ならとお許し頂けましたので、よろしいでしょうか」 丁寧な挨拶をしながら青山(あおやま )(とおる)刑事と染谷(そめや )翔子( しょうこ)刑事は病室に入ってきた。 「佐伯 萌さん、誠に申し訳ございませんでした」 青山刑事と染谷刑事は深々と頭を下げた。 「いやいやいや、そんな、頭上げてください」 萌は恐縮している二人を気遣うように、柔らかい顔で 「家で階段から落ちて死んでたら、事故やてなりますよ。それに私善人中の善人ですから。殺されるなんてね。考えられないでしょ。あっ、空やったら」 「私やったら何だって、さぁどうぞお掛けください」 空は椅子を2つベットの横に並べた。 「ありがとうございます。では、失礼します」 青山刑事、染谷刑事は深刻な表情で座った。 「犯人捕まったんですね」 萌は2人の刑事の空気から直ぐに察した。空は居た堪れなくなり、朝日が差し込むカーテンの隙間を閉めに席を立った。 「佐伯 祐三さんがお亡くなりになりました」 「ええっ」 萌と空は同時に悲鳴に似た声をあげた。 実叔父 佐伯(さえき )祐三(ゆうぞう)60歳。 「萌さんが階段から転落した3月3日に京都に来られてたようですね」 「あの、おじさんが犯人なんですか」 萌は起き上がって、青山刑事を真っ直ぐに見つめた。 「萌、横にならないと」 空は、カーテンを閉めに行ってそのまま刑事2人とはベットを挟んで立っていた。 「……うん」 萌は素直に枕に頭をつけた。目から涙が一直線に枕に染み込んでいた。 おじさんが亡くなった、私を殺そうとした悲しみと、怒りが入り混じった涙だった。
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