白い時間

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白い時間

突然のことで頭が白くなった。 前会った時は「好き」や「ずっと一緒」と言ってくれたのに。 今日会った時には「別れよう」と切り出された。 受け入れられず、みっともないくらい子供のように泣きじゃくって相手に「別れないで」や「悪いところがあるなら直す」と言った。 しかし、相手の気持ちは変わらず「別れよう」の一点張りだった。 どう抗っても、相手の心は戻せない。 それだけでショックだったし、何も考えられなかった。 次の日、目が覚めても、フラれた衝撃で思考が真っ白になる感覚は消えなかった。 部屋が汚くなって荒れるのも構わず泣いた。 仕事も休み、誰とも関わりたくなかった。 全てが白になると感じた。 どれくらいの時が経っただろう。 泣いたお陰か、気持ちは落ち着いた。 相手のことは忘れよう。 心が自分にもう向かないなら、一々すがっていても仕方がない。 相手から貰った物や写真は捨てよう。心苦しいけれど、必要なことだから。 荒れた部屋も片付けた。汚いと心が乱れるから。 恋を失ったのは辛いが、振り返るのはやめようと決心した。 新しい一歩を踏み出すために、玄関の扉に手をかけた。 白い時間は前に進むために必要な時間だった。
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