檸檬

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 理科室からマッチをくすねて戻ってきても、煙草(たばこ)の葉はそのままだった。 自分は何故(なぜ)こんな夢を見たのか。現実の彼女も(けが)れているのか。自分はこれ程までに盲目(もうもく)だったというのか。何処(どこ)かでそれに気付いていたのか。問えば問う程この夢から覚めたくなくなる。しかしまた、それも洗脳なのだろう。何も変わらない。 マッチを()る。ぼうっと出た炎は今にも沈む夕陽(ゆうひ)によく似ていた。ぱっと放って、ぽとりと落ちて、煙草(たばこ)の葉はよく燃えた。 蔓延(まんえん)する匂いすら君、と受け入れてしまう自分が居る。目を閉じると()ぐに、此処(ここ)から現実へ落ちていくのが分かる様であった。
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