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一人椅子に座って、机の上に両肘を付いている。顔を掌達に預けたまま、自分は窓の端の方から覗く西陽に僅かに目を背け、明るみの中でぼうっと黒板の消し残しを見詰めている。
素っ頓狂な位軽い音を立てて、前の引戸から君が顔を出した。
何をしているの、と問われたらなんと返そうか、と反射的に考えた。何故ここに居るのか、などという事は知る由もない。其れは全く自分のせいではないのだが、かといって特に何もしていない、と言うのも、或いは眠っていた、と言うのも、なんとなく気が引けるというものだ。
そんな事をよそに、何も言わず隣の机にするりと腰かける君。プリーツスカートが少し縒れて、華奢な膝下、それと新雪の様な太腿が少々、陽に血色を与えられて妙に燦然とした。決してそういう目で見ているのではない、という誰につくこともない衷心の嘘でさえ、君の瞳を見るとどうにも謝りたい気持ちに変わってしまったりする。
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