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駐車場では、特売に多くの客が群がっている。
対応しているのは俊哉と泉。そこに隼が飛び込んできて、柚巴は大丈夫なのかと騒ぎ始めたのだが、二人には訳がわからない。そして特売に集まる客は増える一方である。
さらに当の柚巴が平然とした顔で現れたものだから、隼は目を白黒とさせた。
柚巴は真っ先に俊哉の前に立つ。
「私のクレジット返せ」
俊哉の顔が引きつった。泉と隼が顔を見合わせ、しかし訝し気に柚巴を見てくる。柚巴がこんな乱暴な言葉を使うなど、二人は初めて聞くだろう。
集まった客たちは、身勝手に「なんだ?」「早くしてくれ」とまくしたてる。
「柚巴ちゃん?」
「私のクレジット返せ!」
突きつけたのは経費ノート。貼ってある領収書には西島ホテルの文字、履歴にはしっかりと柳瀬俊哉の名前。
合わせてもう一つ、携帯に残しておいたカード使用履歴の写真も突きつけて。
なにやら不穏な言葉に、集まった客たちがざわめきを止めて、ひそひそと囁きを交わす。
「専務」
そうして柚巴は隼にも向き直った。まずは騙したことに対する謝罪。そしてこの会社で働いて、ずっと胸に押し込んでいた言葉を口にする。
「今日限りで辞めさせていただきます」
――こんなとこで働けるかっ!!
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